3.助成金のワナとウソ、気づけば泥沼に

給付金をだまし取る企業のやり口

 

何とか職場を見つけた僕でしたが、それが続いたのは5カ月とちょっと、という短い時間にすぎませんでした。

 

そこは、とある地域経済ゴシップを扱う雑誌を発行する会社で、僕は記者として雇われました。

 

社長以下、いかにもクセもの、といった見た目の人たちで構成された零細企業です。

 

僕は、文章を書くことが大好きで、将来は小説家をはじめ、ライターとして生活できればいいな、という漠然とした夢を持っていましたから、これは一応その希望と合うように思えたのです。

 

ところが実態は、取材するための人脈や、ネタの仕入先を自分でもっていないと仕事にすらならない、というものでした。

 

当然、そんなことを教えてもらっても、僕自身ではどうしようもありません。

 

だったら、なぜそういう人をいれないんだ、と今でも思います。ようは、社長の気まぐれです。

 

何でも、前任者はベテランだったが、会社の金を使い込み、クビになったそうで…。そんなことをやらかす恐れの少ない若い新人を入れようと思ったとか。いきあたりばったりすぎませんかね?

 

そして、気まぐれを起こす原因となったのが、ハローワークが勧めていた、トライアル雇用、という制度です。

 

 

※若者雇用促進法に基づく認定事業主が、35才未満の対象者に対してトライアル雇用を実施する場合、1人あたりの支給額が最大5万円(最長3ヵ月)となります。

※(1)本奨励金は、支給対象者のトライアル雇用に係る雇入れの日から1か月単位で最長3か月間(以下「支給対象期間」という)を対象として助成が行われます。

※(2)本奨励金は、この支給対象期間中の各月の月額の合計額がまとめて1回で支給されます。

※厚生労働省のページより

 

 

表向きは若者の就業機会を増やすため、なんてことをのたまっておりますが、どこから見ても、企業の都合しか考えていない制度です。

 

これを使って、企業がどのような行動をとるか、ちょっと考えればすぐにわかると思います。

 

そう、3カ月だけ助成金を受け取り、それを過ぎたらクビにするんです!わかったのは、退職後ですけどね。

 

その中でよほどいい人材になると思われたら別ですが、そんな人はめったにいないもの、大多数の人たちの運命は最初から決まっています。

 

大学を卒業したばかりの僕に、効果的なツテづくりなんて3カ月でできるわけがありません。

 

それでも、3カ月間は言われたことをやって、特に何も言われることはありませんでした。

 

露骨に社長の態度が変わったのが、3カ月後です。その豹変ぶりは見事なもので、人間こうもあっさりと手のひらを返せるのか、と驚くほどのものでした。このおっさん、多重人格かよ…と勘違いさせるには十分です。

 

元々眼つきのわるい顔を、さらに皮肉っぽくゆがませながら、こちらの一挙手一投足にネチネチとイヤミを言うようになりました。黒ぶちメガネが、その表情をいっそう悪く引き立てているのがいやらしい。

 

きわめつけは、10年以上もこの仕事をやっているベテランの先輩と比べられ、その人に比べて僕は全くなっていない、とまで言い放つ始末。

 

いや、それって、当たり前でしょ?ついこないだ大学を出たばかりの小僧に、3カ月で並ばれるベテランこそ、存在意義ないでしょうが!

 

完全に言いがかりですが、向こうは独裁者なのでどうしようもありません。頭がくらくらしてきます。しまいにゃ、ウチの中学生の娘の方がいい仕事をするだって…イヤミにのろけに家庭的アピールっすか、いったい誰に言ってんだか。

 

それでも、こんな短期間で辞めてしまっては、履歴書にキズがつく、何とか行ける所まで行ってみよう、と考えていました。

 

次の職場を探す、という選択肢はないわけではなかったんですが、またあの先のない求職活動をするのか、と思うと二の足を踏むのは仕方がありません。

 

そんな僕の行動に業を煮やしたのか、12月になって、とうとう社長自らクビを宣告してきました。しがみつこうとしましたが、半年ももたずに無職に逆戻りです。しかも、短期離職という履歴書のキズのおまけつきで。

 

トライアル雇用に限らず、この手の助成金は、求職者には何の助けにもなりません。なぜなら、お金が支払われるのは、企業に対してだからです。

 

雇われやすくなる、というのが国の言い分かもしれませんが、3カ月だけ雇われたって、まったく意味がないんです。企業は助成金だけふんだくって、その後は放り出す、ということしかしません。

 

これ以降、僕はこのテの制度を利用するのをやめました。履歴書のキズだけ増えて、僕自身に何も残らない制度は、害しかないからです。

 

追い打ちは、予想もしない所からやってくる

 

 

まったく先の見えない人生に、別方面から追い打ちをかけるようなことが起きました。

 

父の精神がいよいよおかしくなり、毎晩のように母に暴言を吐き、ときには暴力をふるうようになりました。とは言っても、別に病気になったわけではありません。

 

以前仕事を辞めてからというもの、父は職を転々としていましたが、その頻度が激しくなったのと、年齢の影響か、新しい仕事にもだんだんと就けなくなってから、その奇行がエスカレートしていったのです。

 

父の心中まで分かるわけがないのですが、どうも言動を見るに、父は母に対して収入が低く安定しない負い目があったのだと思います。母は一応公務員ですからね。

 

また、彼は自分の弱い面を家族に見せるのをとくに嫌がる性格の持ち主でした。自分が定義する、父親とは、一家の主とは、こうあるべきだ、というイメージを大事にし、家族にもそれを強く求めます。通じないと、暴言や暴力に訴えるのです。

 

母は、仕事から帰ってきて、そんなことをされたのではたまらなかったと思います。とうとうノイローゼ気味になって、家を出てしまいました。

 

すったもんだのあげく、結局両親は離婚してしまいます。それも穏便にはいきません。離婚調停が開かれ、その帰りにも父は母につかみかかろうとして裁判所の職員に取り押さえられるなど、見苦しい行動が目立ちました。

 

様々な事情を考えてみても、この行動はいただけません。母もそうでしたが、僕も父には失望しました。自分がどんな苦境に陥ろうとも、それは母には関係がないこと。暴言や暴力に訴えられるのも母が稼いだお金があったからこそなのです。

 

こうして、家庭すらあっさりと崩壊し、僕も家を出ました。お金がないと、夫婦関係すらもろいものなんだな、と思わずにはいられません。僕自身にはそこまで影響はなかったものの、いろいろとものの見方が変わったのは確かでした。

 

泥沼の状況は変わらず、年齢的にもデッドラインが迫ります。

 

 

つづきはこちら 4.”無用の人”への転落はあっという間!

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